放置してはいけない!成長期に起きてしまう痛みのお話し (痛みの真の原因を解明②)
はじめに
これからしばらくお届けする「成長期に起きてしまう痛みのお話し」は、皆さんのお子様やご自身の不調がなぜ改善しないのか、パフォーマンスがなぜ良くなっていかないのかなどを、日本を代表するプロアスリートなどへの2万時間を超える施術を通して見えてきたことをお伝えいたします。
お子様の将来を左右する大切なことをお伝えしていきますので、ぜひお読みいただけたらと思います。
なお、 これからお話しする内容は、あくまでも「病院で、医師の診察を既に受けられている」と言う前提のもとでお伝えしていますので、もしまだお医者さんに相談されてないのであれば、まずは病院で医師の診断を仰いでください。
今回お届けする内容
このシリーズでは、最初にスポーツをがんばっている成長期のお子さんによく起きる痛みや不調などの症状をいくつかピックアップして、一般的に言われている原因と、一般的な対処方法をご紹介します。
その後、私たちがその症状や原因についてどのように考えているかをご紹介していきます。
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
バレーボールやバスケットのように頻繁にジャンプするスポーツや、 長距離を走ったり、ダッシュを繰り返すサッカーなどのスポーツしている10代から30代のアスリート起きやすい症状です。
目安として、以下のように重症度を表すことができます。
1:スポーツ時や日常生活には支障が無いものの、運動後に痛みが出る
2:スポーツ時には支障がないものの、運動の前後で痛みが出る
3:スポーツ時も痛みが出るようになり、運動には支障が出る
4:膝蓋腱の断裂が確認される
症状としては、 ジャンプやスクワット、歩く時などに痛みが出る。 膝を曲げると痛い。膝下や膝の上を押すと痛い、などがあります。
膝蓋腱に断裂が見られる場合には、外科的な処置が必要になります。痛みが発生する箇所は、膝の下だけでなく、膝の上側に出る場合もあります。
一般的に言われている原因
膝にストレスがかかる運動を繰り返すことによって、膝を伸ばす筋肉を使いすぎて柔軟性がなくなり、痛みや炎症を起こしている。
一般的な処置方法
痛みを感じている場所に腫れや熱感がある場合は、炎症が起きている可能性があるので安静にしてアイシング等を行います。
症状の程度によっては、運動制限。
運動前と後のストレッチ
テーピングやサポーターでの膝関節の運動制限
ステロイドやヒアルロン酸の注射
温熱療法や超音波療法
鵞足(がそく)炎
成長期のお子さんに限らず、スポーツをされている方によく見られる痛みの1つです。
痛みは運動中や運動後に主に膝の内側から脛の上部にかけて 感じることが多く痛みを感じる場所を押すと圧痛もあります。
一般的に言われている原因
・オーバートレーニング(筋肉の使い過ぎ)
・間違ったランニングフォーム
・合わない靴の使用
などが鵞足炎の原因とよく言われています。 鵞足とは 膝下内側の部分を指し、 太ももの筋肉「縫工筋」、「薄筋」、「半腱様筋」が すねの骨にくっついている場所になります。 形が水鳥の足のような形をしているため鵞足と言われています。
縫工筋と薄筋、そして半腱様筋が硬くなることによって膝の関節近くにあるゼリー状の袋(滑液包) に負担がかかることによって、炎症などの痛みが発生していると考えられています。
一般的な処置方法
腫れや熱などがある場合には、炎症があると考えられるので、下記の処置が一般的とされています。
・アイシング
・適度な休養
・飲み薬や注射、湿布など
・温熱療法
・ストレッチ
私たちがこの2つの症状に対してどのように捉えているか
前回の記事の中でもお伝えしたのですが、一般的な処置方法では根本原因を解決していないことが多いです。
ジャンパー膝も鵞足炎も、主に太ももの筋肉が硬くなることによって引き起こされています。根本的に原因を改善しようと思うのであれば、この硬くなった太ももの筋肉を本来のやわらかさに戻す必要があります。
筋肉が硬くなる原因は大きく分けると3つありますので、この3つの原因に同時にアプローチして改善していく必要があります。
前回記事のおさらい
今日は新しいことをお伝えする前に、前回の記事でお伝えしたことを振り返りたいと思います。
前回の記事では大きく2つのことをお伝えしました。1つが硬くなっている筋肉が痛みや不調の原因になっているケースが多いと言うこと。もう一つは筋肉が硬くなる3つの原因についてです。
筋肉が硬くなる原因としては、大きく分類すると、以下の3つにまとめることができます。
・筋肉のロック
・エネルギー不足
・老廃物
筋肉のロックは、筋肉の守る仕組みがループして働き続けている状態で、力を抜きたくても抜けない状態であることを前回お伝えしました。
今回はこの3つの原因をどのように改善すれば良いのかについてお伝えいたします。
実はみんなアプローチしている?筋肉が硬くなる「2つの原因」
実は筋肉が硬くなる3つの原因のうち、2つの原因に関しては多くの人がアプローチすることができています。
アプローチできているのは、エネルギー不足と老廃物。
この2つは血流に関係している原因になります。
エネルギーは、酸素と栄養によって作られます。酸素と栄養は血液によって運ばれますので、何かしらの理由により血流が滞ってしまうと、エネルギー不足を引き起こしてしまいます。
老廃物も血液によって運ばれていますので、血流が悪くなると老廃物が溜まってしまいます。
マッサージや電気治療、温熱療法などは、血流を促す働きがありますので、老廃物とエネルギー不足にアプローチすることができています。
一方で、筋肉ロックに関しては、残念ながらアプローチできている方が非常に少ないと感じています。
筋肉を本来の柔らかさに戻すためには3つの原因を同時に解決する必要がありますので、筋肉ロックがボトルネックになっているケースが非常に多いのです。
筋肉ロックとは
そもそも筋肉ロックとは一体どんな現象なのでしょうか?
筋肉には負荷がかかると縮んで守ろうとする仕組みがあります。
通常であれば、その守る仕組みはすぐに解除されるのですが、特定の条件が重なるとその守る仕組みがずっと働き続けてしまいます。そうなると、筋肉は絶えず守るために縮み
続けてしまうため、力を抜きたくても、力が抜けないという状態になります。
硬く縮んだままの状態が、車のシートベルトがロックした状態に非常に似ていたため、私たちはこの状態の筋肉を「筋肉のロック」と表現するようになりました。
筋肉ロックを解除する方法は?
血液の流れを促す方法は皆さんご存知だと思うのですが、筋肉ロックを解除する方法は、おそらくほとんどの方が知らないのではないでしょうか。
今回は難しい解剖生理学的な話ではなく、人間関係を例えに使って筋肉ロックを解除する方法をご紹介します。
先ほどお伝えしたように、筋肉がロックしているときは、筋肉は縮んで一生懸命守ろうとしている状態です。
このような状態の時に、刺激を加えたり(強いマッサージ等)、あるいは無理矢理伸ばそうと(ストレッチ等)したらどうなるでしょうか?
こちら側としては筋肉に柔らかくなって欲しい、伸びて欲しいと言う想いでやっているのですが、筋肉にとってはどうでしょう。
硬く、縮んで守ろうとしているのに、その逆のことをされてしまいますので、余計に縮んで守ろうとしてしまいますよね?
相手がしたいことと逆のことをし続ければ、人間関係がこじれてしまいますし、相手はより頑なになって拒否するようになってしまいます。
筋肉だって同じです。
では、どのようにしたら良いのでしょうか?
良好な人間関係を築くのであれば、まず相手の望みを叶えればいいわけです。相手の望みを叶えることを繰り返し行っていれば、いずれは相手もこちら側の望みを叶えたいと思うようになってくれるはずです。
筋肉も同じです。最初に筋肉がしようとしていることを叶えてあげるのです。筋肉がロックしているケースでは、筋肉は縮んで守ろうとしています。まずはそれを実現してあげるのです。
具体的には、ストレッチと全く逆のことをすればいいのです。 柔らかくしたい筋肉を伸ばすのではなく、たるませてあげる。そうすると筋肉は縮んだ状態が実現するので、「それ以上守る必要は無い」と判断して縮むのをやめてくれます。
意外に思われるかもしれませんが、たったそれだけのことで筋肉のロックを解除することができるのです。
次回の記事ではより具体的にどのようにすれば良いのかについてお伝えします。
まとめ
いかがだったでしょうか?硬くなった筋肉を本来の柔らかさに戻すには、3つの原因を同時に解決する必要があることをお伝えいたしました。
老廃物とエネルギー不足については、普段皆さんが行っていることを継続していれば解決することができます。ところが筋肉ロックを解除するには、今までと逆の発想で筋肉を緩める必要があります。 はじめのうちはこの考え方に慣れないかもしれませんが、 次回具体的にどのようにすればいいかをお伝えしますので、ぜひ試してみてください。
次回予告
次回は本記事でご紹介した、筋肉ロックを解除する為の「セルフ整体のやり方」 をご紹介しますので、是非ご覧ください!
本コラム著者の紹介
鮎川 史園(あゆかわ しおん)
1977年鹿児島生まれ
「ミオンパシー」という独自の整体法の普及と技術改良に携わる。担当した施術時間は2万時間以上。整体スクールの講師、医療従事者への指導、日本を代表するプロアスリートの施術やプロアスリート向けの施術開発も行ってきた。
セルフ整体の本を4冊出版しており、ベストセラー著者でもある。現在は、施術を学ぶ人が混乱しないように、ミオンパシーとは区別して「ゼロ化整体」という名称で施術を行っている。
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