放置してはいけない!成長期に起きてしまう痛みのお話し (痛みの真の原因を解明①)
はじめに
これからしばらくお届けする「成長期に起きてしまう痛みのお話し」は、皆さんのお子様やご自身の不調がなぜ改善しないのか、パフォーマンスがなぜ良くなっていかないのかなどを、日本を代表するプロアスリートなどへの2万時間を超える施術を通して見えてきたことをお伝えいたします。
お子様の将来を左右する大切なことをお伝えしていきますので、ぜひお読みいただけたらと思います。
サッカーを一生懸命頑張っていたら、痛みで練習に参加できなくなってしまった。
成長期に入って、関節などの痛みで思う存分練習ができない。
体の硬さが気になって、色々と試しているのになかなか改善しない。
スポーツを一生懸命頑張っている子供ほど体への負担は大きくなりますので、その分、体のケアをしっかりとしなければいけません。ところが正しい知識を持って体のケアをできている方が非常に少ないと感じています。
なお、 これからお話しする内容は、あくまでも「病院で、医師の診察を既に受けられている」と言う前提のもとでお伝えしていますので、もしまだお医者さんに相談されていないのであれば、まずは病院で医師の診断を仰いで頂ければと思います。
今回お届けする内容
今回お届けする内容は初回ですので、痛みがどのようにして起きているのかなど全体的なお話をしつつ、 成長期によく発生する痛みを2つほどピックアップしてお話しします。
世間一般で言われていることとは違うことをお伝えすることにもなりますので、ぜひ柔軟な視点でお読みください。
1:シーバー病
「踵骨骨端症」や「セーバー病」と言われることも。特に10歳前後の男児で発症することが多く、かかとの骨(踵骨)の成長板などに炎症が起きることによって痛みが生じていると考えられています。 場合によっては踵骨骨端核の一部が壊死することも
症状
症状は以下のように段階的に進むことが多く見受けられます。
1.運動後の踵や踵の側面の痛みと腫れ。 運動をしていなくても、かかとや踵の側面に圧痛があることも
2.踵を着けられずつま先歩き
3.安静時でも痛みが出るように
整形外科等では、主に症状に基づいて診断を行いますが、X線で踵骨骨端核の分節化や硬化が確認できるときもあります。
一般的に言われている原因
成長期の子供の踵には、踵が分裂したような骨端核と言う骨があります。これは完全に分裂しているわけではなく、骨端軟骨(いわゆる成長線)でつながっているのですが、15・6歳になると骨端軟骨部分がなくなって完全にくっつきます。
骨端核が完全にくっつくまでの間は、踵の骨の強度が弱くもろい状態ですので、踵につながっているアキレス腱や足底腱膜を介して繰り返し大きな負荷がかかることによって、炎症などが起こっていると考えられています。
一般的な対処方法
一般的に行われる対処方法としては
– 局所安静にして、過激な運動はしない
– 症状がひどい場合は、かかとに負担がかからないように松葉杖やサポーターなどを使用する
– 足底板(インソールやシリコン製のクッション)などを使って負担を分散する
– アイシング
– 湿布薬
– 低周波や温熱療法
– 日常生活に支障をきたすようなひどい状態の場合は、投薬やステロイド注射なども
2:オスグッド
正式名称は「オスグッド・シュラッター病」といいます。 特にサッカーやバスケットボール、バレーボールなどのように膝への負担が大きいスポーツをしている成長期の子供によく見られる症状です。
症状
– 膝周辺の痛み
– 初期の段階では運動を止めると楽になる
– 膝蓋骨下の骨に出っ張りが出来ることも
一般的に言われている原因
太ももの前側にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は、膝蓋骨(膝のお皿の骨)を経由してすねの骨脛骨の上部にくっついています。この筋肉をよく使うサッカーやバスケットボールを成長期に行うと、 骨の成長に比べて、筋肉や腱の成長が追いつかず、筋肉付着部に大きな負担がかかってしまい、 炎症を起こすと考えられています。
また、成長期はこの筋肉がくっついている箇所がまだしっかりと硬くなっていないので、大きな負担がかかると剥離等が起き、 骨が隆起してしまうこともあります。
一般的な対処方法
成長期の一過性の痛みと考えられているため、成長が終了すると痛みは消えると一般的には考えられています。
– 局所安静
– アイシング
– 大体四頭筋のストレッチ
– ベルトやサポーターの使用
– 痛みがひどい時は、松葉杖などを使用して負荷をかけないようにする
次回以降も成長期に起きてしまう症状をピックアップして紹介していきますので、次回以降のコラム更新をお待ちください。
共通する原因
私たちの見解をお伝えする前に、一般的に言われている事にどのような違いがあるのかが理解できるように、今回ご紹介した成長期によく発生する痛みに共通する 一般的な痛みの原因と対策方法を簡単にまとめます。
成長期にスポーツをしている子供たちに よく発生する痛みの原因として、主に共通しているのは3つと考えています。
・成長スパート
・過度な運動
・筋力不足
成長スパートは、 骨の成長に筋肉が追いつかず、負担が生じて、痛みが発生していると考えられています。
※成長スパートの時期は骨の成長に対し、筋肉の成長が追い付かない時期を指します。
一般的な対処方法で共通すること
それでは、一般的な対処方法で共通することどんなことがあるでしょうか?
・ストレッチ
・安静にする
・痛み止め
・ステロイド
・冷やす行為
これらの一般的な対処方法に対して、私たちがどのように考えているかを少しご紹介したいと思います。
ストレッチ
まずはストレッチについて。 筋肉が正常な状態であれば、ストレッチは非常に効果があります。ただし、硬くなってしまった筋肉に対しては、逆効果になってしまう可能性が非常に高いため、硬くなった筋肉を柔らかくするためにストレッチをすることはお勧めしません。
安静にする ・痛み止め ・ステロイド ・冷やす行為
これらの方法は、その瞬間の痛みを「緩和する」という点では楽になるかもしれませんが、根本的に痛みが発生している原因を解決しているわけではありません。
痛みが消えたからといって、そのまま放置してしまうと、さらに大きな怪我をしてしまう可能性があるため、気をつける必要があります。
施術を通して見えてきた原因
ほとんどの痛みの原因は、硬くなった筋肉が引き起こしているということが施術を通して分かってきました。
それでは、なぜ筋肉が硬くなると、 痛みが発生するのでしょうか。
1:筋肉が硬くなることによって引き起こされる痛みのメカニズム
筋肉は硬くなると以下の4つのような状態になります
・太い
・硬い
・短い
・伸びない
要は筋肉の力を抜きたくても、抜けない状態というのが硬くなっている筋肉ですので、力こぶを作ったときの筋肉を思い浮かべると、 硬くなっている筋肉がどのような状態になっているのかわかりやすいのではないでしょうか。
硬く、太くなることによって生じる痛み
筋肉が硬く太くなると、その分周りにあるものを圧迫し始めます。 筋肉の周りにある血管が圧迫されると血流が悪くなります。そうすると体は血流を良くしようとして「ブラジキニン」と言う化学物質を生成し始めます。このブラジキニンは血管を拡張して血流を促す働きもありますが、同時に痛み物質でもあります。
この物質がたくさん生成されるようになると、じっとしているときや、体を動かし始めるときに痛みを感じるようになります。温めたり、軽めの運動したりすると楽になるのはこのケースに該当します。
-短く、伸びなくなることによって引き起こされる痛み
硬くなった筋肉は縮んだまま伸びることができなくなっています。 このような筋肉が増えてくると、関節だけではなく、筋肉と骨の付着部分にも大きな負担がかかるようになってきます。
成長スパートが原因で発生する痛みは、主にこのケースが該当すると考えています。
本来であれば骨の成長が早くても、その分筋肉が伸びることができれば、特段負担がかかるような事は無いのですが、筋肉が硬く縮んだまま伸びることができない状態で骨が急激に成長すると、 筋肉が伸びることができない分、筋肉が骨に付着している部分や筋肉、腱そのものに大きな負担がかかります。
2:筋肉が硬くなる3つの原因
私たちの経験上、筋肉が硬くなる原因は大きく分けると3つあります。
・筋肉ロック
・老廃物
・エネルギー不足(ATP不足)
それぞれの詳細については、いずれまた詳しくこのシリーズの中でお伝えいたします。今回は簡単に それぞれの原因について説明します。
筋肉ロック
おそらく、この言葉を聞いたことがある方は、非常に少ないのではないでしょうか。 この言葉は、シートベルトがロックして固まって動けなくなる仕組みと筋肉の守る仕組みが働いたまま固まってしまう現象が似ていたため、造語として私たちが作ったものです。
筋肉に負荷がかかると縮んで守ろうとする仕組みがあるのですが、この仕組みが働いているときに、ある条件が重なるとその守る仕組みをループして働くようになります。
このシリーズに関係のある筋肉ロックを引き起こす主な要因としては
・過度な運動(オーバートレーニング)
・怪我
捻挫や大腿筋挫傷や大腿部打撲(通称:モモカン)などがあります。
老廃物
老廃物は、比較的皆さんもイメージが湧くのではないでしょうか。激しいスポーツをした後などにパンパンに、筋肉が張って硬くなるのは、老廃物が原因となっています。
エネルギー不足(ATP不足)
このエネルギー不足についても、いずれ詳しく説明しますが、 筋肉は力を入れる時だけではなく、力を抜く時もエネルギーが必要です。 エネルギーが不足すると、神経からの信号がオフになったとしても、筋肉は柔らかくなれません。
私たちが、硬くなった筋肉を、本来の柔らかさに戻すためには、この3つを同時に解決する必要があります。
硬い筋肉を放置すると
ここからはお子さんだけではなく、大人の方にもぜひ考えて欲しい内容です。
この硬い筋肉をそのまま放置してしまうと、動ける筋肉の負担が大きくなりますので、 動ける筋肉の守る仕組みのループが発動してしまい、硬い筋肉が徐々に増えていきます。
硬い筋肉が増えることによって起こる怪我については、また別の機会に詳しく説明しますが、
・十字靭帯断裂
・肉離れ
・アキレス腱断裂
・パフォーマンスの著しい低下
これらはこの硬い筋肉を放置することによって発生する可能性が高いと考えています。
過去に、前十字靱帯断裂や損傷、肉離れ、アキレス腱断裂などを経験したことがある方は、間違いなく硬い筋肉が多い状態と言っても過言ではありませんので、ぜひご自身の筋肉の本来の柔らかさに戻すケアを行ってください。
お勧めのケア方法については、このコラムシリーズの中でも今後お伝えしていきます。
まとめ
今回は、主に成長期のお子さんの痛みに関する情報をお届けしてきましたが、これらの事は大人のケアでも同じことがいえます。
一般的に言われている対処方法は、ここでもご紹介した通りを応急処置的なものが多く、根本的な原因改善までアプローチすることができていないことが非常に多いと考えています。
成長期に生じる体への負担が減ったことによって、痛みを感じなくなっている方も多いと感じています。そのような方たちは、成長期とは別の負担が掛かるようになってくると、再び痛みを感じるようになっていきます。
痛みを感じていないからといって慢心するのではなく、大人の方もぜひこのコラムシリーズを参考にして、ご自身の身体のケアを行って頂けると幸いです。
次回予告
次回はこの記事の中でもご紹介しました、筋肉が硬くなる3つの原因の解決方法をお伝えします。
次回の記事もぜひお読みください。
本コラム著者の紹介
鮎川 史園(あゆかわ しおん)
1977年鹿児島生まれ
「ミオンパシー」という独自の整体法の普及と技術改良に携わる。担当した施術時間は2万時間以上。整体スクールの講師、医療従事者への指導、日本を代表するプロアスリートの施術やプロアスリート向けの施術開発も行ってきた。
セルフ整体の本を4冊出版しており、ベストセラー著者でもある。現在は、施術を学ぶ人が混乱しないように、ミオンパシーとは区別して「ゼロ化整体」という名称で施術を行っている。
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